と。但《ただ》し従来《じゅうらい》の経験によると四十八時間後には、気球は自然に降下してくるものであること。第三に、覆面探偵を見かけたらすぐ課長に報告すること。以上のことを行うについて、次のような人員配置にする。――」
 といってその担当主任や係を指名した。一同は何《なん》でも彼《か》でも、それを突きとめて、課長の賞讃《しょうさん》にあずかりたいものと考えた。
 そんな物騒《ぶっそう》な話が我が身の上に懸けられているとも知らぬ覆面探偵青竜王は、竜宮劇場屋上の捕物《とりもの》をよそに、部下の勇少年と電話で話をしていた。
「それで勇君が、ポントスの部屋の隠《かく》し戸棚《とだな》から発見した古文書《こもんじょ》というのはどんなものだネ」
「僕には判《わか》らない外国の文字ばかりで、仕方がないから大辻さんに見せると、これがギリシャ語だというのです。大辻さんは昔勉強したことがあるそうで、辞書をひきながらやっと読んでくれましたが、こういうことが書いてあるそうですよ。――明治二年『ギリシャ』人『パチノ』ハ十人ノ部下ト共ニ東京ニ来航シテ居ヲ構エシガ、翌三年或ル疫病ノタメ部下ハ相ツギテ死シ今ハ『パチノ』
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