た。結局《けっきょく》それが痣蟹の空中葬であったろうという者も出て来たので、本部はすこし明るくなった。
「吸血鬼事件も、これでお仕舞《しま》いになるでしょうな。どうも訳が分らないうちにお仕舞いになって、すこし惜しい気もするけれど」
 それを聞いていた大江山捜査課長は、奮然《ふんぜん》として卓《テーブル》を叩いた。
「吸血鬼事件が片づいても、まだ片づかぬものが沢山ある。帝都の安寧《あんねい》秩序《ちつじょ》を保《たも》つために、この際やるところまで極《きま》りをつけるのだ。ここで安心してしまう者があったら、承知しないぞ」
 一座はその怒声《どせい》にシーンとなった。
 それから大江山課長は経験で叩きあげたキビキビさでもって、捜査すべき当面の問題を一々数えあげたのだった。
「第一に、生死《せいし》のほども確かでないキャバレー・エトワールの主人オトー・ポントスを探しだすこと。第二に、痣蟹の乗って逃げた竜宮劇場の気球がどこかに墜《お》ちてくる筈だから、全国に手配して注意させること。それと同時に痣蟹の屍体《したい》が、気球と一緒に墜ちているか、それともその近所に墜ちているかもしれぬから注意するこ
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