殺されたんですよ」
「そう思うかネ。誰に殺された。――」
「もちろん吸血鬼に殺されたんですよ。屍体はその近所にある筈《はず》ですよ。発見されないというのは可笑しいなア」
「やっぱり吸血鬼か。そうなると、これで三人目だ。これはいよいよ本格的の殺人鬼の登場だッ。――ところで君はいま何処にいるのだ。勇が探していたが、会ったかネ」
「場所はちょっと云えませんがネ。そうですか、勇君は何を云っていましたか。――」
と其処《そこ》までいったとき、何に駭《おどろ》いたか、青龍王は電話の向うで、
「ウム、――」
と呻《うな》った。そして、
「検事さん、また後で――」
といって、電話はガチャリと切れた。
「午後四時十分。――」
と、検事は静かに時計を見た。すると待っていたように、大江山課長が声をかけた。
「青竜王のいるところが分りました。いま電話局で調べさせたんです。青竜王《せんせい》、いま竜宮劇場の中から電話を掛けたんです。私は青竜王に一応|訊問《じんもん》するため、職権《しょっけん》をもって拘束《こうそく》をいたしますから……」
「午後四時十分。――」
と検事は大江山の言葉が聞えないかのよう
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