とに素晴らしい出来栄《できば》えだ」
「僕も全く同感だ。どこからあの熱情が出てくるんだろう。ちょっと真似手《まねて》がない。――」
「ジュリアには非常に調子のよい日というのがあるんだネ。今日なんか正にその日だ。見ていると恐《こわ》い位《くらい》だ」
「そうだ。僕もそれを云いたいと思っていた。僕は毎日ジュリアを見ているが、調子のよい日というのをハッキリ覚えているよ。この一日に三日、それから今日の四日と……」
「よく覚えているねえ」
「いやそれには覚えているわけがあるんだ。それが不思議にも、あの吸血鬼《きゅうけつき》が出たという号外《ごうがい》や新聞が出た日なんだからネ」
「ははア、するとああいう事件が何かジュリアを刺戟《しげき》するのかなア。だが待ちたまえ、今日は何も吸血鬼が犠牲者《ぎせいしゃ》を出したという新聞記事を見なかったぜ。はッはッ、とうとう君に一杯《いっぱい》担《かつ》がれたらしい。はッはッはッ」
「はッはッはッ」
一郎は批評家に嫌悪《けんお》を催《もよお》したのか、怒ったような顔をして、そこを去った。
痣蟹《あざがに》の空中葬《くうちゅうそう》
丁度《ちょう
前へ
次へ
全141ページ中72ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング