ど》その頃、捜査本部では、雁金検事と大江山捜査課長とが六《むつ》ヶ|敷《し》い顔をして向いあっていた。机の上には、青竜王が痣蟹の洋服の間から見付けた建築図の破片《はへん》が載《の》っていた。
「雁金さんはそう仰有《おっしゃ》るですが、どうしてもあの覆面探偵は怪しいですよ」と大江山はまたしても、青竜王|排撃《はいげき》の火の手をあげているのであった。「第一あの覆面がよろしくない。本庁《ほんちょう》の部下の間には猛烈な不平があります。このままあの覆面を許しておくということになると、統制上《とうせいじょう》由々《ゆゆ》しき一大事が起るかもしれません」
「気にせんがいいよ。そうムキになるほどのことではない。たかが私立探偵だ」
「いまも電話をかけましたが、青竜王《やつ》は所在《しょざい》が不明です。その前は十日間も行方が分らなかった」
「まアいい。あれ[#「あれ」に傍点]は悪いことの出来る人間じゃないよ」
「それから所在不明といえば、あの西一郎という男ですネ。彼奴《きゃつ》は犠牲者の兄だというので心を許していましたが、イヤ相当《そうとう》なものですよ。彼奴は無職で家にブラブラしているかと思うと、
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