アの友達の矢走千鳥《やばせちどり》も傍《そば》まできました。でもいくらなんでもこの二人が……」
「でもこの二人の外に誰も少女は帰って来なかったんだろう。一応そこを考えてみなくちゃいけない。それに先刻《さっき》の話では、四郎――イヤその学生の日記帳の数十|頁《ページ》が、いつの間にか破られていたというし……」
「そのことは大辻さんがたいへん怒っていますよ。どうしても二人に尋ねるんだといって、今日出かけていったんです」
「ジュリアの耳飾《みみかざり》右の方のはチャンとしていたけれど、左のは石が見えなくて金環《きんかん》だけが耳朶《みみたぼ》についていたというのは面白い発見だネ」
「僕は耳飾から落ちた石が、もしや吸血鬼の潜んでいた草叢《くさむら》に落ちていないかと思って探したんだけれど、見付からなかった。それからジュリアの歩いたと思う場所をすっかり探してみたんだけれど、やはり見付からなかった。それでジュリアの耳飾の青い石は、あの辺で落したものじゃないということが分ったんですよ。青竜王《せんせい》」
少年はそういって、眼をパチパチ瞬《まばた》いた。青竜王はパイプから盛んに紫煙《しえん》を吸い
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