のに、ちっとも呼んで下さらないので、ガッカリしちゃった」
「勇君も大辻も来ていたのは知っていたが、昨夜の事件は危くて、手伝わせたくなかったのだよ」
「その代り僕は、いろいろな土産話《みやげばなし》を青竜王《せんせい》にあげるつもりですよ。昨夜《ゆうべ》舞台下で殺された男ネ、あれは竜宮劇場に毎日のように通っていた小室静也《こむろしずや》という伊達男《だておとこ》ですよ。いつも舞台に一番近いところにいて、ジュリアが出ると誰よりも先にパチパチ拍手を送るイヤナ奴ですよ。あの男のことは、竜宮劇場のファンなら誰でも知っていますよ」
「ああ、そうだったのか。それはいいことを聞いた」
「あの伊達男小室の咽喉《のど》にあった凄《すご》い切傷も、この前、日比谷公園で殺された学生の咽喉の傷も、どっちも同じことですね。つまりどっちも吸血鬼《きゅうけつき》がやったんですよ」
「うむ」と青竜王はちょっと眼を輝やかせたが、すぐ元の温和《おとな》しい彼に帰った。「そうだ、その日比谷公園の話を詳しく君にして貰おうかな」
そこで勇少年は、前日《ぜんじつ》黄昏《たそがれ》の日比谷公園でみた惨劇《さんげき》について知ってい
前へ
次へ
全141ページ中51ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング