おう》だった。
「ポントスさん。これは貴方のものではありませんかネ」
 といって、青竜王は何か小さい紙片《しへん》を見せた。キャバレーの主人はそれを手にとってみたが、それは何か建築図の断片らしく、壁体《へきたい》だの階段だの奇妙な小室《しょうしつ》だのの符合が並んでいたが、生憎《あいにく》ごく端《はし》の方だけを切取ったものらしく、何を示してある図か、この断片《だんぺん》だけでは分らなかった。
「これ、何ですか。とにかく、わたくしのでは有りません」
 ポントスは腑《ふ》に落ちぬ顔をして、紙片を青竜王に返した。
「もう一つ、お尋ねしますが、赤星ジュリアは昨夜《ゆうべ》ここへ来たのが始めてですか」
「いえ、たびたび来て、歌わせました。もう七、八回も頼みました」
「たいへん御贔屓《ごひいき》のようですね」
「そうです。ジュリア歌う――お客さま悦びます。わたくしも悦びます。なかなかよい金儲《かねもう》けできますから、はッはッはッ」
 ポントスは露骨な笑いを残して出てゆくと、大江山捜査課長は青竜王の腕をムズと捉《とら》えた。
「いまの建築図のようなものを出し給え。君はそれを何時《いつ》の間にどこ
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