らこの仕掛があった? 誰から買ったのかネ」
「ブローカーから買いました。ブローカーの名前、控《ひか》えてありますから、お知らせします」
「うむ、大江山君。そのブローカーを調べて、本当の持ち主をつきとめるんだ。――それはいいとして何故こんな抜け路をそのままにして置いたのかネ。何故痣蟹に知らせて、利用させたのだ」
「わたくし痣蟹と称《よ》ぶミスター北見仙斎《きたみせんさい》を信用していました。あの人、わたくし故国《くに》ギリシアから信用ある紹介状もってきました」
「ギリシアから紹介状をもってきたって。ほほう、痣蟹はギリシアに隠れていたんだな。イヤよろしい。君にはゆっくり話を聞くことにしよう。しかしもし痣蟹から電話でも手紙でも来たら、すぐ本庁へ知らせるのだ。いいかネ。忘れてはいけない」
「よく分りました」
 そこでオトー・ポントスはまた恭《うやうや》しげに敬礼をして下《さが》ろうとしたとき、
「ああ、ちょっと待って下さい」
 と声を掛けた者があった。それは先刻《さっき》から痣蟹の遺留《いりゅう》した品物をひねくりながら、この場の話に耳を傾けていた覆面探偵《ふくめんたんてい》青竜王《せいりゅう
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