い機械が床上に叩きつけられる音がした。――これは勇敢な青竜王が、ひそかに痣蟹の背後《うしろ》にまわり、機関銃を叩き落したのだった。痣蟹は正面から警察隊の猛射を受けていたので、その撃退に夢中になっていたところをやっつけられたのであった。しかし本当は警官隊は猛射をしていたことに違いないけれど、天井ばかり撃っていたのであった。それは突入した青竜王に怪我をさせることなく、しかも痣蟹を牽制《けんせい》するためだった。すべては名探偵青竜王の策戦だったのである。
 気味のわるい機関銃の響がハタと停った。警官隊の激しい銃声もいつの間にか熄《や》んでいた。暗黒の室内は、ほんの数秒であったが、一転して墓場のような静寂が訪れた。
「灯りを、灯りを……」
 青竜王の呶鳴る声がした。
 それッというので、室内の電灯スイッチをひねったが、カチリと音がしただけで、電灯はつかなかった。警官たちは懐中電灯を探ったが、いまの騒ぎのうちに壊れてしまったものが多かった。それでも二つ三つの光芒《こうぼう》が、暗黒の室内を慌《あわ》ただしく閃《ひらめ》いたが、青竜王に近づいたと思う間もなく、ピシンと叩き消されてしまった。暗黒のな
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