のキャバレーへやってきたものらしい。
青竜王は闇の中で雁金検事と何事かを低声《こごえ》で囁きあった。その揚句《あげく》、話がすんだと見えて、
「じゃ、しっかり頼むぞ」
という検事の激励の言葉とともに、青竜王はコソコソとまた闇の中に紛れこんでしまった。――検事はこんどは大江山課長を引きよせると、何かを耳打ちした。
「よろしい。命令しましょう」
課長はそういって、卓子《テーブル》の陰から匍《は》いだした。彼は銃丸《たま》の中をくぐりぬけながら、力戦している警官隊の方へ進んでいった。
間もなく何か号令が発せられて、武装警官隊の射撃は更に猛烈になった。天井から何かガラガラと墜《お》ちてくる物凄い音がした。
「前面《まえ》を注視していろ!」
隊長が叫んでいる――
と、正面に怪物のように火を吐いていた痣蟹の軽機関銃が、どうしたものか急に目標を変えた。ダダダダダッと銃丸《たま》は天井に向けられ、シャンデリアに当って、硝子《ガラス》の砕片がバラバラと墜ちてきた。
「おや?」と思う間もなく、ワッという悲鳴が聞えて、いままで呻《うな》りつづけていた機関銃の音がハタと停った。そしてドサリという重
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