にとって、無気味な哄笑のする方を注視した。
正面の太い円柱の陰から、蝙蝠《こうもり》のようにヒラリと空虚な舞台へ飛び出したものがあった。皮革《かわ》で作ったような、黄色い奇妙な服を着た痩せこけた男だった。グッと出口の警官隊を睨みつけたその顔の醜怪さは、なにに喩《たと》えようもなかった。左半面には物凄い蟹の形の大痣がアリアリと認められた。ああ、遂に痣蟹が現れたのだ!
意外な犠牲《ぎせい》
待ちに待たれていた大胆不敵な挑戦状の主は、とうとう皆の前に姿を現わしたのだった。怪賊痣蟹は二た目と見られない醜悪な面をわざと隠そうともせず、キッと武装警官隊の方を睨《にら》みつけた。
武装隊を指揮しているのは金剛《こんごう》部長だったが、ヌックと立って部下に号令した。
「あの怪物がすこしでも動いたら、撃ち殺してしまえッ」
痣蟹はそれを聴くと、薄い唇をギュッと曲げて冷笑した。そして突然、背後《うしろ》に隠しもった彼の手慣れた武器をとりだした。それは恐るべき軽機関銃だった。彼が和蘭《オランダ》にいたとき、そこの秘密武器工場に注文して特に作らせたという精巧なものだった。――その機関銃の銃
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