口《つつ》が、警官たちの胸元を覘《ねら》った。
「急ぎ撃てッ」
武装隊長は咄嗟《とっさ》に射撃号令をかけた。
ドドーン。ドドーン。
カタ、カタ、カタ、カタ。
どっちが先へ撃ちだしたのか分らなかった。忽《たちま》ち室内の電灯はサッと消えて、暗黒となった。阿鼻叫喚《あびきょうかん》の声、器物の壊れる音――その中に嵐のように荒れ狂う銃声があった。正面と出口とに相対峙《あいたいじ》して、パッパッパッと真紅な焔が物凄く閃《ひらめ》いた。猛烈な射撃戦が始まったのだ。
警官隊は銃丸《たま》を浴びながら、ひるまず屈せず、勇敢に闘った。前方に火竜が火を噴いているような真赤な火の塊の陰に痣蟹がいる筈だった。それを目標に、拳銃《ピストル》の弾丸《たま》の続くかぎり覘いうった。ときどき警官たちは胸のあたりを丸太ン棒で擲《なぐ》りつけられたように感じた。それは防弾衣に痣蟹の放った銃丸が命中したときのことだった。防弾チョッキがなかったら、彼等はとうの昔に、全身蜂の巣のように穴が明いてしまったであろう。
だが軽機関銃の偉力は素晴らしかった。物凄い速さで飛びだしてくる銃丸は、大部分防弾衣で防ぎとめられはし
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