しに、突然室内の灯火《あかり》が一せいに消えて、真暗闇となった。客席からはワーッという叫びがあがった。そのとき出口の闇の中から、大きな声で呶鳴《どな》る者があった。
「皆さん、われ等は警官隊です、危険ですから、すぐに卓子《テーブル》の下に潜って下さアい!」
その声が終るが早いか、叫喚《きょうかん》と共に卓子と椅子とがぶつかったり、転ったりする音が喧しく響いた。
(なにかこれは大事件だ!)
客の酔いは一時に醒めてしまった。
すると、こんどは騒ぎを莫迦《ばか》にしたようにパーッと室内の電灯が煌々《こうこう》とついた。
室内の風景はすっかり変っていた。客の多くは卓子《テーブル》の下に潜りこみ、ただすっかり酔っぱらって動けない連中が椅子の上にダラリとよりかかっていた。出口にはどこから現れたのか、武装した三十名ほどの警官隊がズラリと拳銃《ピストル》を擬《ぎ》して鉄壁《てっぺき》のように並んでいる。
「頭を出すと危い!」
警官が注意した。
「あッはッはッはッ」
思いがけない高らかな哄笑《こうしょう》が、円柱の影から聞えた。
素破《すわ》! 雁金検事も大江山課長も、卓子を小楯《こだて》
前へ
次へ
全141ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング