中で定かに分らないが、十歳あまりの少年が駈けこんできた。そして後方《うしろ》をクルリとふりむいて大声に叫んだ。
「オーイ、早くお出でよ、大辻さーん」
向うの方からも、別な跫音がバタバタと近づいてきた。
「待て待て、勇坊《いさぼう》、ひとりで駈けだすと、危いぞオ」
そういう声の下《もと》に、大入道のような五十がらみの肥満漢が、ゼイゼイ息を切りながら姿を現わした。――どうやら二人は連《つれ》らしい。
「大辻《おおつじ》さん。赤星ジュリアの外に、もう一人若い男が殖《ふ》えたぜ」
と、少年は小慧《こざか》しい口を利いた。
「ほう、そうじゃなア」
そういうところを見ると、既に二人はジュリアが屍体のところへ来たのを知っていたらしい。
「皆さん。そこにある屍体を見るのはかまわないけれど、手で触っちゃ駄目だよ。折角の殺人の証拠がメチャメチャになると、警官が犯人を探すのに困るからネ」と少年は大真面目《おおまじめ》でいってから、大辻と呼ばれる大男の方に呼びかけた。「どうだい大辻さん。この殺人事件において、大辻さんは何を発見したか、それを皆並べてごらんよ」
「オイよさねえか、勇坊。みなさんが嗤《わら
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