》っているぜ」
と大辻は頭を掻いた。
「まあ面白いこと仰有るのネ。あなた方は誰方《どなた》ですの」
ジュリアは、眼のクルクルした少年に声をかけた。
「僕たちのことを怪しいと思ってるんだネ、ジュリアさん。僕たちは、ちっとも怪しかないよ。僕たちはこれでも私立探偵なんだよ。知っているでしょ、いま帝都に名の高い覆面探偵の青竜王《せいりゅうおう》ていうのを。僕たちはその青竜王の右の小指なんだよ」
「まあ、あなたが小指なの」
「ちがうよ。小指はこの大辻さんで、僕が右の腕さ」
「青竜王がここへいらっしゃるの?」
「ううん」と少年は急に悄気《しょげ》て、かぶりを振った。「青竜王《せんせい》がいれば、こんな殺人事件なんか一と目で片づけてしまうんだけれど。だけれど、青竜王《せんせい》はどうしたものか、もう十日ほど行方が分らないんです。だから僕と大辻さんとで、この事件を解決してしまおうというの」
「オイオイ勇坊。つまらんことを云っちゃいけないよ」
「そうだ。それよりも早く結論を出すことに骨を折らなければ……」と勇《いさむ》少年は再び大辻の方を向いていった。「大辻さんには分っているかどうかしらないけれど、
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