じょうか》したいと願っている。――一つは大洪水《だいこうずい》のような司法の力、一つは硝子《ガラス》で作った羽毛《うもう》のようにまことに脆弱《ぜいじゃく》な魂――その二つの間に挿《はさ》まれた彼、青竜王の心境は実に辛《つら》かった。
――なんとかして、最後の舞台を力一杯に勤《つと》めさせたい!
と彼は思った。だがジュリアの舞台は、もう誰の目にもそれと分るほど光りを失っていた。
「どうも変だな。ジュリアはいまにも倒れてしまいそうじゃないか」
「あたしも先刻《さっき》から、そう思っていたところよ。どうしたんでしょうネ。きっとジュリアは疲れたんでしょう」
――ジュリア、どうした!
と、三階席から無遠慮《ぶえんりょ》な声が飛んだ。
それが耳に入ったのか、ジュリアはハッと顔をあげたが、その頸《くび》のあたりは短時間のうちにアリアリと痩せ細ってみえた。
――ジュリア、帰って睡《ねむ》ってこい!
と、続いて二階から頓狂《とんきょう》な声が響いた。
ジュリアはいつの間にか力なく下に垂れた顔を、またハッとあげた。彼女はギリギリと上下の歯を噛み合わせた。が――右手に持った真白な鴕鳥《だち
前へ
次へ
全141ページ中134ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング