ょう》の羽毛《はね》で作った大きな扇《おうぎ》がブルブルと顫《ふる》えながら、その悲痛きわまりない顔を隠してしまった。
[#ここから1字下げ]
「別れの冬木立《ふゆこだち》
遺品《かたみ》にちょうだいな
あなたの心臓を
ええ――
あたしは吸血鬼……」
[#ここで字下げ終わり]
という合唱につられたかのように、ジュリアの顔を隠した羽毛の扇がピクピクと宙を喘《あえ》いだ。――そこで曲目は断層《だんそう》をしたかのように変化し、奔放《ほんぽう》にして妖艶《ようえん》かぎりなき吸血鬼の踊りとなる――この舞台のうちで、一番怪奇であって絢爛、妖艶であって勇壮な大舞踊となる。今夜のジュリアの無気力《むきりょく》では、その辺で一《ひ》と溜《たま》りもなく舞台の上に崩《くず》れ坐るかと思われたが、なんという意外、なんという不思議! 彼女は生れ変ったように溌剌《はつらつ》として舞台の上を踊り狂った。
ウワーッ! という歓声、ただもう大歓声で、シャンデリヤの輝く大天井《だいてんじょう》も揺《ゆる》ぎ落ちるかと思うような感激の旋風が、一階席からも二階席からも三階席からも四階席からも捲《ま》き起った
前へ
次へ
全141ページ中135ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング