こし元気がないようですが、ちゃんと舞台に出ています。一向逃げ出す様子もありません」
「そうかネ、フーム……」
 と検事は大きな吐息《といき》をした。そして秘《ひそ》かに覗《のぞ》き穴から、舞台を注視した。なるほど、ギッシリと詰《つま》った座席の彼方《かなた》に、見覚えのある「赤い苺の実」の絢爛《けんらん》たる舞台面が展開していた。扉《ドア》の隙間を通じて、
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「あたしの大好きな
 真紅《まっか》な苺の実
 いずくにあるのでしょう
 いま――
 欲しいのですけれど……」
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 と、豊潤《ほうじゅん》な酒のような歌声が響いてくるのであった。――ジュリアは確かにいた。同じような肢体をもったダンシング・チームの中央で一緒に急調《きゅうちょう》なステップを踏んでいた。
「幕を締めさせましょうか。そして舞台裏から一時に飛び掛《かか》るんですか……」
「うん、――」と、雁金検事は覗き穴から目を離さなかった。
「検事さん。早くやらないと、青竜王の生命が請合《うけあ》いかねますよ。――」
 と、大江山も日頃の競争意識を捨てて、覆面探偵の身の上を案ずるのであった
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