…それでは儂も一緒に出かけよう」
 そういって雁金検事は椅子から立ち上った。
 検察官は重大な決心を固めて、奮《ふる》い立った。――そして丸ノ内の竜宮劇場へ――。
 一行の自動車が日比谷の角《かど》を曲ると、竜宮劇場はもう直ぐ目の前に見えた。その名のとおり、夜の幕の唯中《ただなか》に、燦然《さんぜん》と輝《かがや》く百光を浴びて城のように浮きあがっている歓楽の大殿堂《だいでんどう》は、どこに忌《い》むべき吸血鬼の巣があるかと思うほどだった。その素晴らしく高く聳《そび》えている白色の円い壁体《へきたい》の上には、赤い垂れ幕が何本も下っていて、その上には「一代の舞姫《まいひめ》赤星ジュリア一座」とか「堂々|続演《ぞくえん》十七週間――赤き苺の実!」などと鮮《あざや》かな文字で大書《たいしょ》してあるのが見えた。ああ真に一代の妖姫《ようき》ジュリア!
 大江山捜査課長の指揮下に、整然たる警戒網が張りまわされた。こうなれば如何に戦慄《せんりつ》すべき魔神《まじん》なりとも、もう袋の鼠同様だった。
「赤星ジュリアは、ちゃんと居るのかい」
 と、雁金検事は入口にいた銀座署長に尋ねた。

「はア、す
前へ 次へ
全141ページ中131ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング