い》だったのだ!
「ああ、あたしは……」と妖女は胸を大濤《おおなみ》のように、はげしく慄《ふる》わせた。思いがけない大きな驚きに全く途方《とほう》に暮れ果てたという形だった。
「やっぱり、刺し殺すのだ!」
と叫んで、妖女は再び鋭いナイフをふりあげたが、やがて力なく腕が下りた。
「どうして貴下が殺せましょう。妾の運命もこれまでだ!」
そういった妖女は、青竜王の身近くによると、戒《いまし》めの縄をズタズタに引き切った。しかし青竜王は覆面をとられたことさえ気がつかない。――妖女はいつの間にか、この荒れ果てた部屋から姿を消してしまった。
かくて風前《ふうぜん》の灯《ともしび》のように危《あやう》かった青竜王の生命は、僅かに死の一歩手前で助かった。
大団円《だいだんえん》、死の舞踊《ぶよう》
「――検事さん! 雁金さんは何処へ行かれた?」
と、慌《あわ》ただしく、検事局の宿直室に飛びこんで来たのは、大江山捜査課長だった。
「おう、どうしたかネ、大江山君」
検事は書見《しょけん》をやめて、大きな机の陰から顔をあげた。
「ああ、そこにおいででしたか。喜んで下さい。とうとうポン
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