が反響の多いこの室内の爆笑は大変|賑《にぎや》かだったが、一旦それが消えてしまうとなると、反動的に、墓場のような静寂《せいじゃく》がヒシヒシと迫《せま》ってくるのだった。
「キキキッ」
とまた鳴いた。
「可哀想《かわいそう》に、鳴いているな」そう云って大蘆原軍医は、大きい鉄枠《てつわく》のなかを覗《のぞ》きこんだ。そこには大きな針金で拵《こしら》えた籠《かご》があって、よく肥ったモルモットが三十匹ほど、藁床《わらどこ》の上をゴソゴソ匍いまわっていた。
「じゃ、そろそろ実験にとりかかろうじゃないか」と星宮理学士が、腰をあげて、長身をスックリと伸《のば》した。
「よかろう」研究班長の川波大尉は、実験方針書としるしてある仮綴《かりとじ》の本を片手に掴《つか》みあげた。「第一測定は、午後九時カッキリにするとして、まず実験準備の方をテストすることにしよう。大蘆原軍医殿に、モルモットを硝子鐘《ガラスがね》のなかに移して貰おう。それから、星宮君は、すぐ真空喞筒《しんくうポンプ》を回転《まわ》してくれ給え」
航空大尉と、理学士と、軍医との協同実験が始まった。これは川波大尉が担任する研究題目で、航空
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