恐しき通夜
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)赭《あか》ら顔《がお》の
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)理学士|星宮羊吾《ほしみやようご》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点、字下げの位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)上に※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と
×:伏せ字
(例)四ケ月目の××××××だった
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1
「一体どうしたというんだろう。大変に遅いじゃないか」
眉《まゆ》を顰《ひそ》めて、吐きだすように云ったのは、赭《あか》ら顔《がお》の、でっぷり肥った川波船二《かわなみふねじ》大尉だった。窓の外は真暗で、陰鬱《いんうつ》な冷気《れいき》がヒシヒシと、薄い窓|硝子《ガラス》をとおして、忍びこんでくるのが感じられた。
「ほう、もう八時に二分しか無いね。先生、また女の患者にでも掴《つかま》ってんのじゃないか」
腕時計の硝子蓋《ガラスぶた》を、白い実験着の袖《そで》で、ちょいと丸く拭《ぬぐ》いをかけて、そう皮肉ったのは白皙《はくせ
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