き》[#底本では「白晢」]長身の理学士|星宮羊吾《ほしみやようご》だった。
 これは第三航空試験所の一部、室内には二人の外誰も見えない。だがこの二十坪ばかりの実験室には、所も狭いほど、大きな試験台や、金具《かなぐ》がピカピカ光る複雑な測定器や、頑丈《がんじょう》な鉄の枠《フレイム》に囲《かこま》れた電気機械などが押しならんでいて、四面の鼠色《ねずみいろ》の壁体《へきたい》の上には、妖怪《ようかい》の行列をみるようなグロテスク極《きわ》まる大きい影が、匍《は》いのぼっているのだった。
「キ、キ、キ、キキキッ」
 ああ厭《いや》な鳴き声だ。
 ホト、ホトと、入口の重い扉《と》の叩かれる音。二人は、顔を見合わせた。
 クルクルと把手《ハンドル》の廻る音がして、扉《ドア》がしずかに開く。そのあとから、ソッと顔が出た。
 色の浅ぐろい、苦味《にがみ》の走ったキリリとした顔の持ち主――大蘆原《おおあしはら》軍医だった。
 室内の先客《せんきゃく》である川波大尉と星宮理学士との二人が、同時にハアーッと溜息《ためいき》をつくと、同時に言葉をかけた。
「遅いじゃないか。どうしたのか」と大尉。
「あまり静
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