讐だ! きっと其の男を殺して、八ツ裂《ざ》きにしてやるんだ。おれがその男を殺した廉《かど》により、次の日、死刑にされたっていい』
と家中を呶鳴《どな》って歩いたものだ。彼は復讐の方法をあれやこれやと考えたのだったが、遂には、それはすべて無駄だと判った。それというのが、その男は、星宮君と同じような近代的の主義思想の男で殺されても一向制裁と感じないという種類の人物だった――とマア、斯様《かよう》に連絡をつけて話をしないと、どうも面白味が出てこない」
軍医はポケットから手帛《ハンカチ》を探しだして汗を拭いた。このとき南に面した硝子窓《ガラスまど》が、カタコトと鳴って、やがてパラパラと高い音をたてて大粒の雨がうち当った。
「ほう、これはひどい雨になったな。――で其の次兄というのが、智恵袋《ちえぶくろ》を、いくたびもいくたびも絞《しぼ》りかえしているうちに、とうとう彼は、その場に三尺も躍りあがるような、素晴らしい復讐《ふくしゅう》を考えついたのだった。それは……」
と、ここまで大蘆原軍医が話してくると、どこかで、
「コトコト、コトコト……」
と扉《ドア》を叩くような物音がした。三人の男は
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