く》に腫《は》れあがった相貌《そうぼう》は、あさましいというよりは、悪鬼のように物凄いものだった。さすがの儂も眼を蔽《おお》った。やがて気がついてみると、二機は互に相手の胴中を噛合《かみあ》ったような形になり、引裂かれた黄色い機翼を搦《から》ませあい、白煙をあげ海面目懸けて墜落してゆくのが見えた。それが遂に最後だった。戯《たわむ》れに恋はすまじ、戯れでなくとも恋はすまじ、そんなことを痛感したのだった。儂は、あの日のことを思い出すと、今でも心臓が怪しい鼓動《こどう》をたてはじめるのじゃよ」
そう云って川波大尉は、額の上に水珠《みずだま》のように浮き出でた油汗を、ソッと拭《ぬぐ》ったのだった。丁度《ちょうど》その時、時計は午後十時のところに針が重《かさな》ったので、三人はその儘《まま》、黙々《もくもく》と立って、測定装置の前に、並んだのだった。
3
第二話 星宮理学士の話
「さて僕には、川波大尉殿のような、猟奇譚《りょうきたん》の持ち合わせが一向にないのだ。といって引下るのも甚だ相済まんと思うので、僕自身に相応した恋愛戦術でも公開することにしよう。
さっき、
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