いらと部屋中を歩きまわる。結局決ったのは、もっと別の部屋を探してみようということだった。
そのチーア卿が、五番目の部屋に侵入したときに、漸《ようや》く満足すべき結果に達した。
「ああ、これだ、これだ」
卿の駈けよったのは、部屋の壁全部を占領している大金庫であった。この中にこそ、金博士の重要書類がぎっしり入っているに違いない。
幸いにして金庫破りにかけてはチーア卿は非凡なる技倆を持っている。彼はこの方では英国に於ける第一人者といって差支《さしつか》えないほどの研究者である。その大金庫は、僅々《きんきん》十一分のうちに見事にぎいっと開かれた。
ところが、この金庫の中に、卿をひどく当惑させるものが待っていた。というのは、予想どおり設計書が一件ごと別々の袋に入ったものが、三百何十種収められて居り、その袋の表面を見ると、「世界一の発明。引力|相殺装置《そうさいそうち》」とか「世界一の発明、宇宙線を原動力《げんどうりょく》とせる殲滅戦《せんめつせん》兵器」とかいった具合に、どれを見ても、名称の上に「世界一」を附してあることだった。これではチャーチルの命令に応じて、最も勝《すぐ》れたる世界一
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