にして、更に次の部屋へ。
次の部屋は模型室だった。四方の壁に棚が吊ってあって、その上に博士の発明になる新兵器の模型の数々が、まるで玩具屋の店頭よろしくの光景を呈して並んでいた。それを一つ一つ見ていく卿は、溜息のつきどおしだ。それというのがどれもこれも垂涎《すいぜん》三千|丈《じょう》の価値あるものばかり。三段式の上陸用舟艇あり、超ロケット爆弾あり、潜水飛行艇あり、地底戦車あり、珊瑚礁架橋機《さんごしょうかきょうき》あり、都市防衛電気|網《もう》あり、組立式戦車|要塞《ようさい》あり、輸送潜水艦列車ありというわけで、どれもこれも買って行きたいものばかりで目うつりして決めかねる。さてこそ出るは溜息《ためいき》ばかりで、卿の心臓はごとごとと鳴って刻々《こくこく》変調を来たす。
「困ったなあ。この中で一体どれが世界一であろうか」
それは分りかねる。分りかねるならば、択《えら》んで行く途なし。さらばやはりみんな買って行こうとすると、これだけ嵩《かさ》ばったものを到底《とうてい》持ち出しかねる。
「困った。どうすればいいのか」
卿は、顔一面にふき出た脂汗《あぶらあせ》を拭うことも忘れて、いら
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