》なしという凄《すご》いものを御提供願いたい。そのお礼の一つとして、博士をアラスカへ御案内したいですな。エスキモーの燻製など、天下の珍味でございますよ」
「わしは人間は喰わぬ」
と、人を喰った博士が、コップから水をごくりと飲んでいった。
「今のはベラントの失言《しつげん》でございます。博士、世界をたちまち慴伏《しょうふく》させる新兵器といたしましては、どんなものを御在庫《ございこ》になっていましょうか」
「分っているよ。では案内しよう」
博士は、今日は珍らしく事《こと》の外御機嫌|斜《なな》めならず、両特使を引連れて、研究室へ導く。
「ここにあるのが、訪問者の身許透視器《みもととうしき》だ」
と、博士は壁に嵌《は》めこんである複雑な弱電装置を指し「入口の扉に近づくと、この人体周波分析器が働いて、その人物のあらゆる特徴と思想を分解し、こっちの自記記録紙の上にプリントするのだ。ほら、これが例のチーア卿の分だ。あとの二つが君達両人の分だ」
と、自動ピアノの鑽孔布《さんこうふ》のようなものを引張り出して示す。ルスとベラントは、どっと冷汗をかく。
次の部屋は模型室だ。そこへ一歩を踏み入
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