る時計台から、ボーン、ボーンと十一時を知らせる寝ぼけたような音が響いて来た。――ああ十一時。あの時刻だ。私はドーンと胸を衝《つ》かれたような激動《げきどう》を感じた。
金貨《きんか》を握《にぎ》った屍体《したい》
「うむ、事件だぞ」
「すぐ其処《そこ》だ。行くか……」
二人の刑事は顔を衝突せんばかりに近づけて、お互《たが》いの腕を掴《つか》み合った。
「直《す》ぐ行こう」
「だが此奴《こいつ》をどうする?」
「うむ。さあ、どうする?」
刑事は私の処置《しょち》をどうしたものかと躊《ためら》った。
「逃げませんよ、私ア」と言下《げんか》に応《こた》えた。「一緒に行ったげましょう」
「お前も行くか。どうかそうして呉れ!」
刑事はホッと溜息《ためいき》をついた。
私はわざと先頭《せんとう》になって駈けだした。刑事も横合《よこあい》から泳ぐように力走した。
真暗な、広い空地に出た。向うにポツンと二階建らしい倉庫のようなものが立っているが、灯《あかり》もない真黒な建物だ。悲鳴はそのあたりから起ったように思われる。私は前面を注視しながら走った。
沈黙の倉庫の前まで来ると、
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