」
「だが、この屍体をどうする?」
刑事が躊《ためら》っているところへ、折よく、密行《みっこう》の警官が通りかかった。
二人は物慣れた調子で、巡回の警官を呼ぶと、屍体の警戒やら、警察署への通報などを頼んだ。警官はいく度も肯《うなず》いていたが、刑事たちが、
「じゃ、願いますよ」
と肩を叩くと、佩剣《はいけん》を握って忍《しの》び足に元来た道へひっかえしていった。
「さあ、これでいい。……じゃア、飛びこむのだ」
私たち三人は、抜き足さし足で、この建物の周囲をグルリと廻った。表の大戸《おおど》は、埃《ほこり》がこびりついていて、動く様子もない。裏手に小さい扉がついていて、敷居《しきい》に生々《なまなま》しい泥靴の跡がついている。これを引張ったが、明かない。
「いいから、内側へ外《はず》して見ろ!」
経験がいかなる場合も、鮮《あざや》かに物を云った。戸の端《はし》がゴトリと内側へ外れた。それに力を得て、グングン圧《お》すと、苦もなく入口が開いた。――内は真暗だ。
懐中電灯の光が動いた。階下には、大きな古樽《ふるだる》がゴロゴロ転がっている。その向うには一|斗《と》以上も入りそうな
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