案《あん》の定《じょう》下からニッケル色の弾丸《たま》がコロリと出て来た。
「ほほう、なるほど」刑事は駭《おどろ》きの声を放った。「これは何故だ」
「いいですか、上を向いちゃ、犯人が気付きますよ。下を向いていて下さい。犯人は倉庫の二階の窓から仙太を撃ったのです」
「そりゃ変だ。仙太は背後《うしろ》から撃たれている」
「いいえ、傷はあれでいいのです。仙太のポケットに入っていた金貨は泥がついていたでしょう。仙太の野郎は、あの金貨を皆、この路面から拾ったのです。だから泥がついているんです。金貨は、同じ倉庫の二階から犯人が投げたのです。仙太がそれを拾おうと思って、地面に匍《は》わんばかりに踞んだのです。いいですか。そこを犯人は待っていたのです。丁度われわれが今こうしている此の恰好《かっこう》のところを、上からトントンと撃ったのですよ」
「ナニ、この恰好のところを……」
 上から撃たれたと聞いて、二人の刑事は、身の危険を感じてパッと左右に飛び退いた。
「そんなに騒いじゃ、犯人に気付かれますよ」と私は追縋《おいすが》って云った。
「さア早く、この建物の出口を固めるのです」
「よオし。おれは飛びこむ
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