しゃ》るのですかい、はッはッはッ。……まア、それはいいとして、旦那方。私は犯人の居処《いどころ》を知っていますよ」
「ナニ、犯人の居処? 犯人は誰だッ」
「犯人は誰だか知らない。だが犯人の居処だけは知っているのですよ……ホラ、ここに真暗な崩《くず》れ懸《かか》ったような倉庫がありますネ。犯人はこの中に居るのですよ」
「何故だ。どうして此の中へ逃げこんだというのだ」
「喋《しゃべ》っていると、犯人が逃げだしますよ」
「しかしわれわれは、意味もないのに動けないよ」
「じゃ簡単に云いましょう。いま仙太のポケットから出た五枚の金貨ですがネ、あの金貨には泥がついていたのをご存知ですか」
「……」
「もう一つは、そこに錆《さ》びた五寸釘《ごすんくぎ》を立てて置きましたが、路面に垂直に、小さい孔《あな》が明《あ》いていますよ」
刑事たちは、目をパチクリさせて地面に踞《しゃが》むと、その錆びた釘を退けて、太い箸《はし》をつっこんだ程の縦穴《たてあな》を覗《のぞ》きこんだ。
「これは?」
「ピストルの弾丸《たま》が入っているのですよ。今掘りだしてみましょう」
私は釘の先で、穴をどんどん掘った。すると
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