だった。
「これアすくなくとも四五百円にはなる代物《しろもの》だ」と折井刑事は目を瞠《みは》って、「仙太の持ち物としては、たしかに異状《いじょう》有りだネ、山城君」
「もっと持っていたんではないかネ」と山城は眼をギロリと光らせた。「仙太のやつ、ここで強奪《ごうだつ》に遭《あ》ったのじゃないか。だから金貨が道に滾《こぼ》れている……」
「強奪に遭ったのなら、なぜ金貨が滾れ残っているのだ。それにわれわれが駈けつけたときにも、別に金貨を探しているような人影も見えなかった」
「そりゃ君、仙太を殺したからさ。……いいかネ。仙太は数人のギャングに取り囲まれたのだ。前にいた奴が、仙太の握っている金貨を奪おうとした。取られまいと思って格闘するうちに、手から金貨がバラバラと転がったのさ。手強《てごわ》いと見て、背後にいた仲間が、ピストルをぶっ放したというわけだ。前にいた奴は仙太を殺すつもりはなかった。仙太の仆《たお》れたのに駭《おどろ》いて、あとの金貨は放棄して、逸早《いちはや》く逃げだしたのだ。見つかっちゃ大変というのでネ」
「これは可笑《おか》しい」と折井刑事は叫んだ。「第一、格闘だといっても、その
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