刑事たちは、屍体から眼を放すと、地面を嗅《か》ぐようにして、路面《ろめん》を匍《は》いまわった。同じような、三つの金貨が拾いあげられた。一つは屍体の伸ばした右手から一尺ほど前方に、もう一つは、消えている街灯の根っこに、それから最後の一つは、倉庫のような荒《あ》れ果《は》てた建物の直ぐ傍に……。
「沢山の金貨だ。これは一体、どういうのだろうな」
「この金貨と、仙太殺害とはどんな関係があるのだろう。それからあの金塊事件とは……」
 刑事たちは、次々に出てくる疑問を、どこから解いたものかと、たいへん当惑《とうわく》している風だった。
「旦那方。金貨はまだまだ出てきますぜ」
 と、私は仙太のズボンの右ポケットから、裸のままの貨幣を掴みだした。銅貨や銀貨の中に交《まじ》って、更にピカピカ光る五枚の金貨が現れた。
「おい、余計なことをするナ」と折井刑事は一寸|狼狽《ろうばい》の色を見せて呶鳴《どな》ったが「もう無いか、金貨は……」と、息せきこんだ。
「どれどれ」と代って山城刑事が、ポケットというポケットに手をつきこんだが、その後は金貨が出てこなかった。全部で丁度《ちょうど》十枚の金貨が出てきたわけ
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