》めかねたものか、なおも屍体をいじくりまわしていた。
「おやア、なんか掌《て》の中に握っているぞ」
と、突然に、折井刑事が叫んだ。
「ナニ、握っているって? よし、開けてみろ」
山城刑事は懐中電灯をパッと差しつけた。屍体の右手は、蕾《つぼみ》のように固く、指を折り曲げていた。折井刑事はウンウン云いながら、それを小指の方から、一本一本外していった。
「うん、取れた。……あッ、これは……」
「なんだ、金《かね》じゃないか!」
掌《て》の中からは一枚のピカピカ光る貨幣が出てきた。
「金だ。オヤこれは金貨だ! それも外国の金貨だ」
金貨が出てきて、刑事達は俄《にわ》かに緊張した。銀座の金塊盗難事件以来というものは、黄金《おうごん》を探して歩いた二人だ。その黄金製品である金貨が、屍体となった赤ブイ仙太の掌中《しょうちゅう》から発見されたということは、極めて深い意味があるように思われたのだった。それにしても、それが外国金貨とは何ごとだ。
「旦那方」私は立った儘《まま》で云った。「金貨が落ちていますよ。ホラ、そこと、もう一つ、こっちにも……」
「ナニ、金貨が落ちている?」
「本当だ……」
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