ういわれるとそんな匂いがしないでもない。
『相当の量が入ってきたんだろうね』
『そうだ、相当の量だ。相当濃いやつだね。しかも、短時間に、さっと入ってきたんだ』
『何処から?』
『それが分らない。さあこれからそれを探すんだ』
 帆村は室内をのこのこ歩きだした。
『おい帆村君、こんなところに、空気抜けの穴が二つあるぜ。これは大丈夫かね』
『なんだ、空気抜けじゃないか。空気抜けは、室内の空気を上に吸い出すものだ。問題はない』
『果してそうかね。おい帆村君、空気抜けの上をしらべてみた方がいいと思うがね』
 帆村は僕の顔をじろりと見たが、
『おい、屋上へ行ってみよう』
 と僕を誘った。
 懐中電燈をつけて、三階の階段をまた一つ上にのぼるとそこは屋上遊歩場であった。そしてその周囲は、高さ一メートルほどの厚い壁でぐるりととりまいてあった。その内側にぴったり寄り添って空気抜けの烟突《えんとつ》がついていたが、この高さは、周囲の壁よりもずっと低く、五十センチぐらいしかなかった。そして遊歩場のレベルともうすれすれのところから、空気の出てくる横窓が明《あ》いていた。
『雨水がたまると、この穴から入りこみゃし
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