は惨事のあった部屋から顔を出した。
 中には七つの屍体が転がっていた。鑑識課員に交って憲兵の姿も見える。
 日本飛行科学研究所の第四研究室員七名が、研究中に揃いも揃って、冷たい屍体となり終ったのであった。この愕《おどろ》くべき悲報に、僕は帆村探偵について、現場を覗きに来たというわけだった。
『一体どうしてホスゲン瓦斯などにやられたんだね』
『それが分らん。なにしろ七名とも、皆死んでいるのだから』
 そういっているところへ、部屋の中が俄《にわ》かに騒がしくなって、入口が大きく開かれた。中からは、数名の刑事や警官が、一つの屍体を担《かつ》ぎだした。
 僕はそれを見ると、横にとびのいた。
 担がれている屍体が、ぎゅーっと顔をしかめた。
『あれえ、生きているじゃないか』
 と、僕は思わず叫んだ。
『しっ、静かに。一人、息をふきかえしたのだ』
 と警官が叱った。でもその顔は喜びに輝いていた。
『――この男が口をきくようになれば、事件がどうして起ったんだか、分るぞ』
 と、最後に部屋から出てきた警部が、部下にそっと囁いた。
 帆村と僕とは、その生きかえった男の後について、急造の病室について入った。
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