部員の配置表が出来て、僕は前にも云ったとおり、比較的|閑散《かんさん》な信濃町駅を守ることとなった。
「古屋君、それじゃ御苦労だが、『信濃町』の午後四時から五時までの下車客を、例の規準にしたがって記録してくれ給え。僕も信濃町を守ることになっているんだ。で僕は男の方を取るから、君は一つ婦人客の方を担任《たんにん》してもらいたいんだ」
「先生、男の方は僕がやります。それで先生には……」
「駄目だよ、男の方は全下車客の八十パーセントも占めているんだから、慣《な》れない君には無理だと思うんだがネ。婦人の方は数も少いうえに種類も少くて、大抵《たいてい》女事務員とか令嬢奥様といった位のところだから、君で充分つとまると思ってそう決定《きめ》てあるんだ。是非、婦人をひきうけて呉れ給えな」
 僕は、それでも断るとは言い出せなかったものの、困ったことになったと思ったことである。女なんか、ひと眼みるのもけがらわしいと思っている僕が(いや全《まった》く其の頃は真剣にそう信じていたのである)一時間に亘《わた》って女ばかりを数えたり分類をするためにジロジロ観察したりするのは実に耐えられないことだった。それに、この
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