階段
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)呉《く》れない
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)比較的|閑散《かんさん》な
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)僕にたかった[#「たかった」に傍点]もの
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出来ることなら、綺麗に抹殺してしまいたい僕の人生だ。それを決行させては呉《く》れない「彼奴《きゃつ》」を呪《のろ》う。「彼奴」は何処《どこ》から飛んできて僕にたかった[#「たかった」に傍点]ものなんだか、又はもともと僕の身体のうちに隠れていたものが、或る拍子に殻《から》を破ってあらわれ出でたものなんだか判然しないのであるが、兎《と》も角《かく》も「彼奴」にひきずられ、その淫猥《いや》らしい興奮を乗せて、命の続くかぎりは吾《われ》と吾《わ》が醜骸《しゅうがい》に鞭をふるわねばならないということは、なんと浅間《あさま》しいことなのであろう。
嗚呼《ああ》、いま思い出しても、いまいましいのは、「彼奴」が乗りうつったときの其《そ》のキッカケだ。あの時、あんなことに乗り出さなかったなら、今ご
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