足で、その梯子のある階段のうしろへ廻った。がそのとき階段のうしろで、意外なことを発見してしまった。というのは、廊下へ通ずる戸口《とぐち》の蔭に、ミチ子と、それから何ということだろう、友江田先生とが、ピッタリ寄《よ》り添《そ》って深刻な面持《おももち》で密談をしていたではないか。
「これは、古屋君」
「先生、えらい事件が起りましたね」
「いまも京町さんと話をして居たことです。ソフトカラーをしているお互いは、ネクタイで締められないように用心《ようじん》が肝要《かんよう》だとナ。ハッハッハッ」先生は洞《うつろ》のような声を出して笑った。ミチ子は僕達のところから飛びのくと、タッタッタッと階段を二階へ登って行ったので僕の計画は見事に破壊せられてしまった。だが先生はミチ子と何の話をしていたのだろう。


     4


 こう嫌疑者《けんぎしゃ》ばかりが多くては困ってしまう。僕は誰と相談してよいのか、誰を犯人の中からエリミネートしてよいのか判断に迷った。
 僕は徹夜して犯人の研究をしたのであるが結局、疑いはどこまでも疑いとして残った。この上はどうしても積極的行動によって犯人を見出さなければならな
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