が二つほどすこし右手によって置かれ、左手には沢山の小引出を持ったカード函が重《かさな》っていた。そしてなによりの偉観は室の中央に聳《そび》え立つ幅のせまい螺旋《らせん》階段であった。それはわずかに人一人を通せるほどの狭さで、鉄板を順々に螺旋形にずらし乍《なが》ら、簡単な手すりと、細い支柱で、積み重ねて行ったものだった。思わずその下に立ち寄って上を見上げてみると、螺旋階段はスクスクと伸びて三階にまで達している。その三階の天井は首の骨が痛くなるほど随分と高かった。なんとなく、「ジャックと豆の木」の物語に出て来る天空《てんくう》の鬼《おに》ヶ|城《しま》にまでとどく豆蔓《まめづる》の化物のように思われた。螺旋階段の下には事務室へ通ずる入口の外にも一つ廊下に通ずる入口があった。螺旋階段を四宮理学士と二階へのぼると、ここもおなじような本棚ばかりの四壁《しへき》と、読書机とがあり、入口はない代りに、天井が馬鹿に高くつまり二階の天井は元来《がんらい》ないので、三階の天井が二階の天井ともなり、随《したが》って三階はバルコニーのようにこの室の上に半分乗り出していて、それへ螺旋階段が続いていた。
「三階へ
前へ
次へ
全37ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング