脆弱な躰である。
どうして血痰が出るのか。患部に血管が露出していて、それから出血することは分っているが、そこから出血させないようにするにはどうしたらいいのか。何を慎んだらいいのか。
左手を使って高いところへ重いものを持上げることが悪いのは、よく分っている。こんなことは殆んどしない。
なるべく左手を使うこともひかえているが、ときに使う。だが、それは大した使い方ではない故、影響なしと思う。
咳がいけないことは分っている。なるべく咳をしまいとする。しかし咳は自分でとめることは出来ない。咳は胸の中に痰がたまったときとか、咽喉に炎症があるときなど、自然に起るもので、意志の力では停めがたい。
しかし咳が喀血や血痰の基だと思うから、それをむりにも停めようとする。かくて訓練の結果、いくぶんは停められるようになる。
しかしそれは幾分であって、咳がいよいよ出始めると、どうしようもない。それを、同じ咳を出すにしてもなるべく小さい咳を出そうとして苦しい努力をする。修業と同じだ。全くやり切れない。しかし修業を積むと、すこしは咳を緩和出来るらしいことに気をよくして元気を出す。
くさめはいけないと分っ
前へ
次へ
全172ページ中167ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング