ょっと燃えた模様。
 もっとも、あのときは前に警報解除が出、それに情報を加えて「まだ一目標あり、警戒中」と警報したのを、警報解除に安心しすぎて寝てしまったらしく思われる。「正確なる判断」が要望される。
◯昨夜は珍しく敵機来らず。たぶんいつものように十時ごろに一回、一時ごろに第二回目、第三回は三時ごろくると思っていたのに、一回もこなかった。わが航空隊がサイパンへなぐり込みをかけた故か。それとも敵の方で歳末新年は生活に忙しいせいか。
 私は壕に寝て、暁を迎えた。壕に寝るは寒く、身体が痛い。暁前の寒さがひとしおこたえる。目下下痢気味なのは、あるいは壕で冷えたせいか。
◯酒の特配に喜びなし。酒を呑まないためだ。煙草の特配に喜びなし、煙草は吸わないためだ。正月がくるというのに、一体何の喜びがあると身辺をふりかえったのに、三つの喜びがあった。一つは去る二十七日の敵機錐もみ撃墜のこと、第二は敵米英、ことに米の生産補充陣が大消費に喘ぎだしたというニュースしきりなること、第三に家族一同無事なること。

 一月一日(昭和二十年)
◯「一月ではない、十三月のような気がする」とうまいことをいった人がある。

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