昨大みそか夜も三回の来襲。皆一機宛。しかも警報の出がおそく、壕まで出るか出ないかに焼夷弾投下、高射砲うなる。
敵機なお頭上に在りて年明くる
ちらちらと敵弾燃えて年明くる
焼夷弾ひりし敵機や月凍る
◯伊東福二郎君来宅。去る二十七日の空襲に、彼の家の三軒隣りの前の五間道路に、敵爆弾が落ちたとのこと。両側の家の一方は模型飛行機店で店だけこわれ、他方の家は半分吹きよじれた。人の損害は、前の防空壕に一方より圧力がかかって壕がくずれ、上からは土砂が落ち、赤ちゃん一名圧死。
道路をつきぬけて破裂した敵弾は、径十センチばかりの水道鉄管をふきあげ、それが路上に電柱の如く突っ立ち、あたりは水にて池の如し、という。また三千ボルトの高圧線切断し、そのスパークが、瓦斯管の破損個所から出る瓦斯に引火して燃え出した。
伊東君の家の南側ガラス(爆弾は南側におちた)は全部こわれたが、紙を貼って置いたので、粉々にはならなかったが、やっぱりとび散った。二階のガラスは大丈夫とのこと。
半ねじれの家では七十の老人が、いったん壕に入りながら貴重品を思い出して家にもどり、その途端やられた。しかし落ちた屋根も、
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