「ほほほほ。ほほほほ……」
とつぜんカスミ女史は、声高く笑いだした。
「よく分りました。やっと今、分ったんです。まあ、そうでしたか、ほほほほ」
僕は目をぱちくり。気持ちが悪いったらない。女史は何をひとり合点しているのであろうか。
「ねえ本間さん。あなたのいらしたところは……」
と、女史は僕の耳に口をつけて、
「あなたは、うそつきの人間ですね。本当の人間じゃないんですね。あなたは二十年前か十五年前の人間で、こっそりこの世界に忍びこんで来たんでしょう。どうです、ちゃんと当ったでしょう。白状《はくじょう》なさい」
僕は全身に汗をかいて、今にも顔から火が出そうであった。
「はッ。それは……それはご想像にまかせます。しかし一体それは、なぜお分りになったんですか」
これまでに僕の正体を見破った者はひとりもないのだ。しかるにカスミ女史は、何を証拠《しょうこ》に、断定《だんてい》したのであろう。
「いってあげましょうか」
女史はくすくす笑った。
「あなたの影法師《かげぼうし》を、よく見てごらんなさい」
「えっ、影法師ですって」
「そうです。うしろをふりかえってごらんなさい。壁にうつっていま
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