海底都市
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)催眠術《さいみんじゅつ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)黒|焦《こ》げ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あのきざ[#「きざ」に傍点]な釣針ひげ
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妙な手紙
僕は、まるで催眠術《さいみんじゅつ》にかかりでもしたような状態で、廃墟《はいきょ》の丘をのぼっていった。
あたりはすっかり黄昏《たそが》れて広重《ひろしげ》の版画の紺青《こんじょう》にも似た空に、星が一つ出ていた。
丘の上にのぼり切ると、僕はぶるぶると身ぶるいした。なんとまあよく焼け、よく崩れてしまったことだろう。巨大なる墓場だ。犬ころ一匹通っていない。向うには、焼けのこった防火壁《ぼうかへき》が、今にもぶったおれそうなかっこうで立っている。こっちには大木が、黒|焦《こ》げになった幹をくねらせて失心状態をつづけている。僕の立っている足もとには、崩れた瓦《かわら》が海のように広がっていて、以前ここには何か大きな建物があったことを物語っている。
悪寒《おかん》が再び僕の背中を走り
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