すぎた。
僕はポケットに手を入れると、紙をひっぱりだした。それは四つ折にした封筒だった。その封筒をのばして、端《はし》をひらいた。そして中から用箋《ようせん》をつまみ出して広げた。
その用箋の上には次のような文字がしたためてあった。
――君は九日午後七時|不二見台《ふじみだい》に立っているだろう。これが第二回目の知らせだ。
これを読むと、僕はふらふらと目まいがした。今日は九日、そしてうたがいもなく僕は今、この手紙にあるとおり不二見台に立っているのだ。ふしぎだ。ふしぎだ。ふしぎという外《ほか》はない。
僕は一昨日と昨日とふしぎな手紙を受取ること、これで二度であった。その差出人は誰とも分らない。僕の知らない間に、その手紙は僕の本の間にはさまっていたり、僕の通りかかった路の上に落ちていたりするのだ。その封筒上には、僕の名前がちゃんと記されており、そして注意書きとして「この手紙は明日午後七時開け」と書いてあったのだ。
昨日開いた第一回目の知らせには「君は今寄宿舎の自室に居る。机の上には物象《ぶっしょう》の教科書の、第九頁がひらいてあり、その上に南京豆が三粒のっているだろう」とあった。
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