きだから、君を選んだわけだ。僕は君をうんとよろこばしてあげるつもりだ」
「あんないたずらをしたのは、君だったの」
「いたずらだって、とんでもない。いたずらなんという失敬なものじゃないよ」
 と辻ヶ谷君は僕と向きあって、大きな顔をきげんのわるい大人のような顔にゆがめた。
「僕は君に、すばらしい器械のあることを教えてあげたのさ。実にすばらしい器械さ。未来のことがちゃんと分る器械さ。いや、そういうよりも、未来へ旅行する器械だといった方が適当だろうね」
 辻ヶ谷君は、とくいらしく右あがりの肩をそびやかせた。
「未来へ旅行する器械? うそだよ。そんなものがあってたまるものか」
 僕は信じられなかった。
「ふふふふ。君はずいぶん頭がわるいね。なぜって、そういう器械があればこそ、君は三回も、その翌日の行動を僕にいいあてられたんじゃないか」
 辻ヶ谷君がなんといおうと未来の世界へ旅行ができるなどというふしぎな器械が、この世にあろうとは、僕には信じられなかった。
「頭がわるいねえ、本間君は……」と、辻ヶ谷君は気の毒そうに僕を見ていった。「まあいい。君をその器械のところへ連れていってやれば、それを信じない
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