をかけられた。その声をきくと僕は電気にうたれたようにその場に身体がすくんでしまった。いよいよ出たぞ、怪人が! 果して何者?
 壊れた瓦《かわら》の山を踏む無気味《ぶきみ》な足音が、僕のうしろをまわって横に出た。僕のひざががたがたふるえだした。うつろになった僕の眼に一人の少年の姿が入ってきた。
「本間君、君はふるえているのかい」
 僕の気持は、ややおちつきをとりもどした……。
「あっ、君は……」
 僕の前に立ってにやにや笑う少年。それは同級生の辻《つじ》ヶ|谷《や》虎四郎《とらしろう》君であった。
 この辻ヶ谷君というのは、かわった少年で、少年のくせに額《ひたい》が禿《は》げあがっており、背は低いが、顔は大人のような子供で、いつも皆とは遊ばずひとりで考えごとをしているのが好きで、ときには大人の読むようなむずかしい本をひらいて読みふけっていた。したがって今まで僕たちは、辻ヶ谷君とはほとんど口をきいたことがない。
 その辻ヶ谷君の、かさかさにかわいた大きな顔を見たとき、僕は今までの秘密がなにもかも一ぺんに分ったように思った。
「ふふふふ、本間君。なにもそんなにふるえることはないよ。僕は君が好
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